我武者羅に仕事をしていると三代目がわざわざ訪ねて来てくれた。俺が言うのは変だが、三代目は俺に甘いと思う。
「そろそろ昼じゃろ。横田楼の品出しじゃ」
そう言ってニコニコ笑う三代目は、俺が知っているままの三代目だ。
俺は素直に頷き、共に昼食をとった。
三代目オススメの横田楼の品出しは相変わらず美味かった。
「どうじゃ?生活は?」
そう聞かれてグッと黙った。
何も言いたくなかった。
何も聞かれたくなかった。
俯く俺に、三代目は頭を撫でてくれた。
「おぬしが、カカシと一緒にワシのところへ来た日のことを、よく覚えておるよ」
「え?」
「手を繋いでおった。ワシが驚いておるとおぬしがハッキリ言いよったわい。「真剣に付き合っている」とな」
三代目に報告したのか。なんの記憶もない。だけどその意味は理解できた。
生半可な付き合いではないのだ。
「カカシさんは・・・」
「ワシも突然で驚いてのぉ、本気なのかと聞くと、カカシは深く頷いたわい。「三代目が許していただけるならこの場で結婚させてほしい」とな」
「えぇ!?」
「遊びなら言語道断じゃが、・・・本気なのも対処に困ったわい」
目を細めて笑われた。
そうは言っても祝福してくれているようで、胸が痛かった。
どれ程の想いで三代目に会いに行ったのだろうか。本気で結婚するつもりだったのか。それを誰でもない、三代目に伝えたかったのか。そんなに愛していたのか。
ジワッと涙が出る。
「カカシさんが、分からないんです」
「ん?」
「優しくないし、酷いことばかり言われて・・・」
「あやつものぉ、二十歳の頃は任務に明け暮れておったからからのぉ。・・・悪いことをした」
任務ばかり。
あれから彼のことを調べた。有名な里を代表する忍らしい。知らないことの方が驚きなぐらい有名人だった。
でも、俺にとってその情報は殆ど意味がない。それは上辺だけの話で、彼自身のことなど何も書いてはいなかった。
他人の評判も、今の俺には聞けない。
「八年で、人が変わると思いますか?」
夢の中のカカシ先生とのギャップを埋められない。どうしても他人に思えて、だけど姿は一緒でその違和感に耐えられない。
「変わらんよ」
三代目はきっぱり言い切った。
その言葉はひどく落胆した。
やはり人なんて早々変わるはずない。夢の中のカカシ先生も、本当はきっと・・・。
そう思うと泣きたくなる。あの優しさは嘘なのかと疑いたくなかった。
「イルカよ」
三代目は優しく俺の名前を呼んだ。
「意地の悪い奴は、ずっと意地の悪い」
分かっている。
分かっているが、認めたくない。
首を振る俺に「じゃが」と続けた。

「優しい人は、今も昔も、変わらんよ」

優しい人。
それは夢の中のカカシ先生だ。
彼の優しさを疑いたくない。

なら、今のカカシさんを疑えばいい。

彼は本当に優しくないのか。
ひどい人なのか。

本当に?

その疑問はゆっくりと心に波紋を描き、静かに広がっていく。

本当に?
彼に優しさを見いだせないのか?

若いし、まだ出会って間もない。そんな簡単に結論が出せるほど、彼と向き合ったのだろうか。
彼と真剣に語り合っただろうか。

してない。
俺はまだ、彼となんの話もしてない。


避けていたのは、どっちだ?


「三代目、俺まだなにもしてなかったです」
「イルカはあわてんぼうだからのぉ」
ふぉふぉふぉと可笑しそうに笑う。俺もつられて笑いたくなった。
そうか。
なんだ、そんな簡単なこと。
「三代目」
「ん?」
「三代目も、今も昔も変わらず、優しい方です」
そう言うと、少し目を見開いて、ふっと笑った。
「おぬしものぅ」

そうだ。
変わらないものは、ずっと変わらないんだ。




その日は三代目に断って早めに返してもらった。買い物を済ませると台所へ向かった。
食器棚から、揃いの食器を出す。
これにいっぱい食事が盛れるように、飯を作ろう。
そうして揃いの椀で食べよう。
きっと何か変わる。
何か変えてみせる。



「ただいま」
そう言いながら帰ってきた彼は俺に後ろから抱きついた。
「あー腹減った」
スンスンと首元の匂いを嗅がれて、くすぐったくて止めてくださいと逃げた。
「もうすぐ飯ですからちゃんと手を洗って待っててください」
怒った顔してみても、彼は少しも動じなかった。
「はぁい」
そういいながらもニコニコして俺の傍から離れない。
「どうしたんですか?」
不思議に思って聞くとうんんと笑う。
「可愛いなぁって思って」
甘い声でさらっと言われた。こういうこと本当真顔で言うから敵わない。
(あ・・・)
そこでようやく気がついた。
これは夢だ。
彼はこんなこと言わない。言うはずない。
彼ならきっと、帰ってきたら目を丸くして、「上手いの?」なんて軽口ききながらも食べてくれる。「ふーんまぁまぁだね」なん言う彼を「じゃあカカシさんが作ってください」って拗ねて、そしたらカカシさんが・・・。
とりとめのないソレは、ただの、それこそ自分勝手の妄想でしかない。
だけどどこか違和感を感じた。
それは当たり前だったはずなのに、その違和感が何故か俺の心をかき乱した。
彼はこんなこと言わない。

だけど聞きたいのはこんな言葉じゃない。




ゴツンっと頭が卓袱台にぶつかる。そこでハッと覚醒し、辺りを見渡す。
人の気配はなかった。
時計を見るともうすぐ日付が変わる。
帰ってこない。
そのことが、ゆっくりと確実に心を蝕んだ。
『今日は帰ってこられなくて結構です。三代目にバレないようにしてくれたら何処へでも行ってもらっても何も言いません』
そう言ったのは誰でもない、俺だ。
手つかずの飯を前にぐぅーと情けない音がした。
一緒に食べようとずっと待っていた。
それはただの自己満足で、そこに相手の気持ちはないけど。
どこか喜んでもらえると、思っていた。
それはなんの根拠のない、ただの思い込みだったのに。
それなのにこんなにも落胆している。
今日は帰ってこないのだ。
きっと誰かと一緒にいるのだろう。女か、男か。俺よりも美人で、俺よりも優しくて、俺よりも従順で。
俺よりも、彼を愛している人と。
そう望んだのは、確かに自分だったはずなのに。
張り切って作った自分はなんて陳腐だろうか。
(片づけないと・・・)
こんなところ彼に見られたくない。
きっと鼻で笑われる。今更機嫌取りかと笑い、こんなもので気が引けると思ったのと侮辱される。
アンタって重いね。そう言って二度とココには帰ってこないだろう。
そう願ったのは、確かに俺じゃないか。
片づけないと思うのに、体は動かない。もうこのまま寝てしまおうかと卓袱台にうつ伏せた。
何やっているんだろう、俺。
記憶さえお互い思い出してしまえば、失ったはずの幸せなんて手に入るだろう。
でも、どうしても。

彼とはこのまま上手くいくとは思えなかった。

ガチャッとドアの音がして、ハッと勢いよく顔を上げた。
疲れなんて一気に吹っ飛んだ。
そこには暗部服を着た彼が立っていた。

全身血を浴びて、冷たい殺気を漂わせながら。

冷水を頭から浴びたかのように、体が凍りついた。
今まで出会ってきた誰よりも恐ろしく鋭い殺気に身がすくむ。
今、ここで殺されても、不思議に思わない。
そのぐらい圧倒的な力を感じた。
震える俺にフンッと鼻で笑った。
「アンタ、こんなことでビビッてんの?」
「ビビってなんか・・・」
「震えてるクセに」
指摘されて、グッと押し黙る。
確かに怖い。だけどそんなこと認めてしまうのは癪だった。
だってこの人はカカシさんなのだから。
夢の中のカカシ先生と同じ人だから。
「アンタがそんな殺気だしているから」
言い訳のような言葉を口にすると、ギッと睨まれた。

「夢の中のアンタは、ビビったりしなかった!」

遮るように、叫んだ。
その言葉は何故だか心を深く突き刺さった。
「オレのこと拒んだりしなかった。どんな姿でもアンタは抱きしめてくれた」
「そんなの・・・っ」
そんなの知らない。
そんな幻想を抱かれたって、俺は。
俺は。


夢の中の、俺ではない。


「アンタの理想を押しつけるなっ!!」


そう言って、ハッと気がついた。
それは俺も同じだった。
俺も同じように、夢の中のカカシ先生を押しつけていた。
夢の中のカカシ先生が、あまりにも優しいから。
まるで俺の理想だったから。

俺は、彼を、カカシさんを一度として見ていなかった。

ギュッと唇を噛み締める。
だけど、俺は。
俺は、それに違和感を感じているんだ。

体当たりのように彼に抱きついた。
それは決して甘い抱擁ではなかったし、俺もそんなつもりはない。
ムカつきながら、ギュウギュウと力いっぱい抱きしめた。
「ちょっ、痛い痛いっ」
「これがお望みだったんでしょう!」
「はぁ?アンタ抱きしめ方も知らないの?」
「えぇ、俺は恋人いたことないので」
「プッ」
そう言うと可笑しそうに吹き出した。ムッときたが、事実なので仕方ない。
「カカシさん」
俺は顔をあげずに名前を呼んだ。

「ごめんなさい」

彼が苛ついていた理由がよく分かった。俺は夢を見てから一度として彼を見てなかった。彼の中に、夢の中のカカシ先生がいないか、そればかり見ていた。
プライドの高い彼が、それに気がつかないわけはない。
彼が抱きたいとばかり言っていたのがよく分かる。
彼はそんな俺に不安に思い、俺を試していた。
それなのに俺は酷いこと言ってしまった。
「・・・いーよ」
彼は素っ気なく答えた。
「オレも押し付けてなかったと言えばウソになるし」
「でも・・・」
彼はそんなこと少しも見せなかった。今こうやって見せつけられてとても苦しい。こんな苦しい目に少しも味わっていなかった。

「オレのために飯作って待っててくれたんでしょ?」

そう言われて気恥しいような。気づいてくれて嬉しいような。
照れたようにヘヘヘッと笑った。
「たいしたもの作れませんけど」
「期待してないよ」
相変わらずカチンっとくることしか言わない。
だけど、それが彼らしくて安心する。
「相変わらず減らず口ですね!」
「疲れてるんだから労わってよ」
「はいはい。じゃあ風呂でも入って綺麗にしてください」
「一緒に入って洗ってくれないの?」
ニヤッと意味ありげに笑われた。途端かぁぁっと顔が赤くなる。
「っ、そういうのは恋人としてくださいっ!」
言った途端彼の表情が消えた。
え?と思った瞬間、グッと手を引かれた。
バランスを崩した俺はそのまま彼に倒れ込む。それを当たり前のように受け止めると、グイッと顎を掴み顔を上げさせられた。
色違いの目が、こちらを見つめていた。
その瞳にははっきりと俺がうつっていた。

「オレたち恋人でしょ?」

そのまま口づけられる。
口の中を嬲られる、その言葉が浮かぶぐらい深く激しい口づけだった。
口を離すと、ちゅぱっとイヤラシイ音がして、銀色の糸がひいた。

「悪いけど、それをなかったことにするつもりはないから」

風呂入ってくるから、と言うとさっさとこちらを振り向かず風呂場へと消えた。
俺は足から崩れ落ちた。
腰が抜けた。
頭が全然ついていかなかった。
ただ、一つ分かることといえば。
「・・・・・・俺の、ファーストキス」
混乱する頭の中で、たたき出した言葉はそんな乙女みたいなことだった。



烏の行水のようにあっという間に風呂からあがったカカシさんは、腰にタオルを巻いただけという男同士だったら別におかしくないが、今の今では何となく意識してしまい思わず顔を真っ赤にした。
それを見て彼はにやぁっと人が悪い顔をした。
「何?ようやく意識してくれたの?」
「ばっ、っ!」
上手く喋れず、金魚のようにパクパクと口を動かすと、またにやぁっと笑われた。
「ま、安心していーよ。すぐにヤるわけじゃないし。アンタ奥手そうだから待ってアゲル」
「ヤっ!?」
「今日のところは手料理ね」
そう言って箪笥から私服を手に取った。
そして涼しい顔で座る。
「ご飯よそって。腹減った」
それは夢で見たあの幸福な食卓の風景とは異なったが。

卓袱台に並ぶ揃いの食器と。
何より彼の顔をみたら、夢よりももっと幸せな気持ちになれた。



◇◇◇



手料理が気に入ったのか、その日から毎日催促された。簡単な任務の時には弁当まで作らされた。
三角にむすべないおにぎりを見ては「ナニコレ菱形?」と馬鹿にされ、煮崩れした南瓜を見ては「こんなことも満足にできないの?」と呆れられ、とにかくグチグチ文句言うわりには完食する彼を見ると、憎まれ口をたたかずにはいられないんだろうなと思うようになった。
ムッとするけど、同じように俺も口が悪いしたまに手が出るからおあいこだ。
「今日の唐揚げは自信作なんですよ!」
そう言うと顔を顰めて「アンタ揚げ物ばっかり食べてたら太るよ?」と今一番気にしていることを言われてしまった。
彼が食費を出してくれているから、普段買わないような食材ばかり買ってて美味くてつい食べすぎてしまうのだ。滅多に食べれらないからとがっつくなんて貧乏性かもしれない。
恐る恐る腹を掴むと、摘めてしまった。
「!?」
その衝撃に頭が真っ白になる。
鍛錬を欠かしたことはなかったが、料理が美味いのと、今までに比べて仕事が動かないのが原因だろうか。
「どれどれ」
カカシさんは後ろからむにっと腹の肉を掴んだ。
「・・・・・・なるほど」
「バカッ、触んなっ!」
同じ量食べても一切体型など変わらない、美しい肉体を持つ彼に比べられたくない。
身を庇うように彼から後ずさる。
「決めました!俺、今日からダイエットします!」
すると俺が逃げたのが不服だったのか、ふーんと目を細めた。
「じゃあ今日の自信作の唐揚げはオレのモノね」
「!!そ、それとこれとは話が違います!」
「ナニソレ」
プッと吹き出す。
彼は笑うと目がキュッとなる。目尻に小さく皺ができて、この人も皺ができるぐらい笑ったのかと思うと嬉しくなる。美しく冷たい印象の顔が、柔らかく優しい顔になる。
その顔が堪らなく好きだった。

優しさは、決して一つではない。






「イルカ」
優しく微笑まれて俺は嬉しくて同じように笑う。そうすると更に深く笑ってくれた。
そのまま、ゆっくりと顔が近づいてくる。
わっ、わっ、わぁーっ!と一人慌てているが、そのまま口づけを交わす。
ちゅっ、ちゅっと何度もキスをする。
だけど俺は逃げられなくて、手で押し返すこともできなくて、ようやくこれは夢なのだと気づく。
そうなると一層居た堪れない。友だちと映画を見ているとえっちなシーンになった時のようなそんな気まずさがあった。
「イルカ」
はぁ・・・と熱っぽい声で囁かれた。
それは以前の、彼と同じだった。
あの時は彼の言葉が蘇り不快でしかなかったが、今は全然違う。
ビクッと体が震えたのは、夢の中だからではない。
ペロッと舐められ、手が服の中に入ってきた。するりするりと這う手は官能的でいやらしかった。
それなのに俺は露わのない声を上げる。
まるで女みたいな声に、憤死しそうになる。
なんだ、その、甘えた声は。
男の本能で、誘っている、興奮させようとしているような甘い声だった。
俺の体を舐めまくってるカカシ先生も、嬉しそうに、だけど目はギラギラさせて笑う。
その目は完璧にケモノだった。
剥ぎ取るようにズボンと下着を脱がされると、下半身に顔を埋められた。
(わっ、わっ、わぁーっ!!)
ぺろぺろと絶対他人に触らすどころか見せるところでもないところを躊躇なく舐められた。
それにビクンビクンと反応する。
「カ、ッカシ先生・・・ 」
「ん。柔らかい」
「さっき散々したじゃないですか・・・」
「足りない」
キッパリと言い切る。
そのまま指をつっ込む。
「ーーっ、ぁあ!」
グチュグチュと卑猥な音をたてて、先程までの甘い雰囲気から一転して、性急で荒々しい愛撫に変わる。それなのに俺は萎えるどころか更に淫らに喘いだ。
(なんで・・・)
「あぁん、あっ、あっあっあっ」
「全然足りない」
気がつけば足を開き、自ら彼に合わせて動かしていた。
強すぎる刺激に俺はただ、喘ぐだけだった。
「カカシせんせっ、カカシせんせっ」
「ーーーイルカ」
じゅぷっと指を引き抜くと、更に熱くて太いモノをソコにあてた。
ゆるゆると腰を動かす。
「カカシせんせ、はやく・・・」
そう言いながら顔をあげた。
その時、ぽとっと水滴が落ちた。
そこには雫が頬に流れた、彼が苦しそうにこちらを見ていた。
「イルカ」
落ちてきた水滴は、汗か、それとも・・・。

「全然足りない。全部ちょうだい」




目が覚めて、下半身の不快感に眉を顰めるのはいつぶりだろう。
「・・・・・・嘘だろ」
下着を汚すなんていつぶりだろう。
しかもエロい夢で。
しかもしかもその相手はカカシさんで。
「あぁぁぁあ」
そのまま布団の上でのたうち回る。
恥ずかしいし、気まずいし、情けない。
しかもどこか満たされてスッキリしているのが悔しい。
あれが日常だったのか。いや、恋人同士だから当然かもしれない。いたことないけど。
だけどどこか清らかな初々しいカップルだと思っていたのに一気に濃厚な性を目の当たりにしてそのギャップについていけない。
そういえば、カカシさんは初日にこれを見たのか。初日にこんなの見させられたら・・・目も当てられないなぁ。
これを見て、カカシさんは何を思ったのだろうか。

『一回ヤらせて?』

そう言えばそんなアホみたいなセリフ言われたな。思い出しても脱力してしまう。
でも、今なら少し分かる気がする。
感覚は目が覚めるとまるで煙のようにぼんやりとしか覚えていない。
ただ、鮮明なのは、彼の表情と声。
そして俺を求める、目だ。
あんなふうに愛されたい、求められたいと、思ってしまう。
だけど。
(股を開くなんて・・・っ)
恥ずかしくて死ぬっ!
っというか、なんで俺が下なんだよ。おかしい。普通こういうのは美少年の役割じゃないのか?もっさりした男とヤりたいなんて思うのか?
「何百面相してるの?」
「ぎゃあああ!」
後ろから話しかけられて飛び上がる。
そういえば、忘れてたけど今一緒に寝ていた!
いや、今のは語弊がある。一緒の部屋で別々の布団で寝ている。何故かと言われたら、カカシさんがそうしたいと言ったから。勿論一緒の布団でと言われたがそれは却下させてもらった。因みにカカシさんがベッドで、俺は客用布団だ。ベッドで寝たきゃ一緒に寝ろと無言の圧力をかけられている。
「朝から煩いね」
「カカシさん。起きたなら声かけてくださいよ!」
「はぁ?何で?」
「何でって・・・。むしろ俺が何でですけど」
「イルカっていつもバカみたいに元気だよねぇ」
それって褒めているのだろうか、バカにされているのだろうか。
ギロッと睨むと、彼はふと何かに気が付き、にたぁっと悪い顔をした。
「イルカ、夢精したの?」
「!?」
一番気づかれたくないことを指摘されて、顔から火が吹きそうだ。
「な、な、な」
「ハハッ、何慌ててんの?別に男なら普通でしょ」
そう言いながら俺の腕を掴んだ。
「ほら、オレも」
俺の手を彼の下半身に触らされた。

そこには熱くて、デカくて、硬いモノが。

「ぎゃぁぁぁ!!」
思わず手を払い除けて仰け反った。
な、ななななんなんだ、あのあのあのあのぶっといモノは!俺の倍あるんじゃないのか?それになに戦闘モードなんだよ!発射十秒前ってか?!これが俗に言う朝勃ちなのか!?男の生理現象なのか!?いや恐い!その大きさ恐い!ナマズレベル!え?それ俺の中に入ってきてたの?嘘だろ?死んじゃう死んじゃう!色々裂けて違うモンでてくるってばよ。
「アンタ、どんだけウブなの?」
ハハッとバカにしたように笑った。
もう何につっこめばいいのか分からなくなって俺はただポカンとした。
「アホ面。朝勃ちぐらいでナニ騒いでんの?自分は夢精したくせに」
「それはアンタが!!」
しまったと口を塞いだ。
俺が見たのは夢だ。彼じゃない。
彼はスッと目を細めた。
そうしてゆっくりと俺に顔を近づけた。
「オレとヤる夢でも見たの?」
ニヤリと笑われたが、俺はそれどころじゃなかった。
夢と同じ顔が、今目の前にいる。
彼の目から確かに、俺を求めているような色を感じた。

その目に、ゾクリと欲情した。

彼も俺の変化に察知したのか、「イルカ」と低い声で俺の名前を呼んだ。
そこに深く沢山の意味を込めて。
「カカシさん・・・」
俺が彼の首に腕を巻き付けるのが早かったか。彼が俺の顎を掴むのが早かったか。

自然に、流れるように唇を合わせた。

生々しい、と思った。
夢とは全然違う。
熱くて柔らかくて吐息が触れる度に体はどんどん彼を欲した。
そしてとても甘く、気持ちよかった。
不思議だ。体の一部を他人と触れ合ってるだけなのに。
手を握ったりするのとは全く違う、心の奥底から何かがこみ上げてくるような、不思議な感覚だった。

それでいてどこかしっくりとくる、まるで失ってた体の一部を取り戻した気分になるのは、何故だろう。

角度を変え、何度も何度も口づける。
俺も二度目なはずなのに、どうすればいいのか自然にわかっているようだった。
そのままゆっくり押し倒される。
「カカシさ・・・」
彼は夢中で俺の体をまさぐっていた。荒々しくて余裕などひとつも無さそうに。
上着を剥ぐって、乳首に吸い付く。
その瞬間、ビクッと体が跳ねた。
「んやぁ・・・」
粘ついた甘い声が出て、思わず口を塞いだ。なんだその甘い声は。俺が出したのか?
グルグルと混乱しているのに、カカシさんはそんな俺にからかえるほど余裕がないのか、ちゅうちゅう吸ったり、甘噛みしたり指でこねくり回してみたりと忙しなく動く。俺もそれに信じられない声で答えた。
恥ずかしい。
気持ちいい。
もっとして。
止めて。
もっと強く。
もっと激しく。
もっともっと。
散々乳首を弄るのを楽しむと、俺の足を掴んだ。
そのまま限界まで開かされる。
ベタベタした下着ごと脱がされると、既に俺のは形を変えていた。
こんなこと初めてなのに。
俺は快楽しか感じてなかった。
「イルカ」
擦れた声で彼が俺を呼んだ。
目はギラギラとし、その目には俺しかいない。
俺だけをただひたすら求めていた。
「カカシさん・・・」
彼の首に手を回し、口づける。
舌を入れると、彼は舌で絡めとったり、歯で愛撫した。
ちゅぱっと彼から離れると、銀色の糸が引いた。
彼と俺をキラキラしながら繋いでいる。
それはまるで彼との繋がりを象徴しているかのようで。

神聖で、それでいて淫靡だった。

彼がズボンを脱ぎ捨てた。
白くて美しい足が露わになる。毛も薄いのか全く感じなくて、しかも綺麗な無駄のない筋肉がついており、まるで芸術品のようだった。
その美しさに、うっとりと見つめた。

が、その中心にナマズがいた。

「ギャアァァァァーーーーッ!!」
思わず大声で叫んだ。
バタバタと暴れる俺に彼は分かりやすく不機嫌になる。
気持ちは分からんでもないが、俺の気持ちを察してほしい。
「はぁ?ナニ?」
「何ですか!そのデカイの!もう凶器ですよ!」
そう言うとはぁ?と言いながら自身の下半身を見た。
「まぁよくデカイって言われるけど、普通じゃない?」
そう言いながら俺のを見た。
「・・・・・・」
気まずそうに目を逸らすの止めろ!そっちの方が傷つくわ!
「っていうか、仕事っ!」
今日も当たり前のように仕事が待っている。
時間もそれなりに迫ってて、慌てて起き上がった。
「ちょっ、アンタここでやめるつもり!?」
「時間ないんですよ!カカシさんも早く着替えて」
「信じられない」
そんな事言われても仕方ないだろう。そもそも朝から何やってるんだろう俺たち。
「トイレでヌいてきてくださいよ」
「アンタ、だからモテないんだよ」
「か、関係ないでしょう!!」
何で急にそんなこと言い出すのか分からない。ムッとすると、彼は呆れたように深いため息をついた。
「入れないから手でシて」
「はぁ!?」
手?でシて?
何を?
ポカンとしてると「そういうのいいから」と無理矢理ソレに触らされた。
「ちょっ・・・っ」
それはずっしりとして、熱くて、脈打っていた。
とても自分と同じモノとは思えない。
ビクッと思わず手を離そうとすると、彼の掌が上から掴み、そのまま彼のモノを愛撫させられた。
赤黒く脈打つソレは、動かす度に熱を更に帯び、大きくなっていった。タラッと蜜が溢れ、こぼれ落ちる。
「ぁ・・・」
その卑猥な光景に、思わず声が出た。
彼は小さく笑い、荒い息を吐いている。
「イルカ・・・イルカ・・・イルカ・・・」
まるでそれ以上の言葉を知らないかのように、俺の名前を繰り返し呼ぶ。
俺はそれだけで堪らなくなり、ギュッと手に力を込めた。
「ーーっ、クッ」
途端、ぴゅうぴゅうと精液が溢れ出た。
手にかかるとジワッと熱を発した。
独特の匂いが辺り一面に広がる。
初めて他人の自慰を見たが、何だか変な気分だ。
気持ち悪い、ではないし、かと言って気持ちイイものでもない。
だけど、あの瞬間は永遠な気がした。
顔が熱い。
「ヨカったよ」
荒い息をしながら、俺を見て笑った。
満足そうな顔を見ていると、それだけでじんわりと胸がいっぱいになる。
「・・・・・・続きは今晩、ね?」
そう言いながら、風呂場へと消えた。

彼の言葉の意味を理解したのは、その日の夕方だった。

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