恋人に振られた。
まだ付き合って半年で、優しくはなかったけど、俺のこと受け入れてくれたから、それで好きになった。
俺はゲイだった。
男性しか愛せない。それに関しては散々悩んだりしたが、今はもう受け入れている。ただ、相手が圧倒的に少ないし、見つけるのも中々難しい。そんな狭い世界でようやく見つけ出した相手だった。
優しくなかったし、しょっちゅう浮気された。彼はバイだったから男とも女とも寝ていた。気に入らなければ殴られたし、金もちょくちょく抜かれた。どう考えても最低な奴だった。
そして今日散々罵倒されて、別れた。言われた言葉は思い出したくもない。居酒屋で呼び出されて、散々罵倒して、金も払わず出ていった。
俺はその場にいることも出来ず、金を払い、一人夜道を歩いた。
本当に最低な奴だった。
だけど何故か涙が溢れてとまらない。別れたいと思っていたのに、今は彼の足に縋ってでもヨリを戻したい。
寂しい。
悲しい。
「うっ・・・うぅっ・・・」
大の大人が人前で泣くなんて恥ずかしい。でも止まらない。胸が痛い。頭もガンガンする。
好きなんかじゃない。
ただ、彼も男も恋愛対象としてみれるから。
それだけだ。
そう思っていたのに、こんなに悲しい。それほど彼のことを愛していたのだろうか。あんな最低な奴でも愛していたのだろうか。なら俺の愛はなんてちっぽけで安っぽくて惨めなのだろうか。
寂しい。
悲しい。
「あの・・・」
横から躊躇いがちに声がした。
きっと優しい人が泣いているのに気がついて声をかけてくれたのだろう。あわててゴシゴシと目元を拭いた。
「よかったら」
そう言いながら白いハンカチを差し出した。その優しさにまた泣けてきた。
「ありがとうございます・・・」
涙を拭いつつ、顔をあげると、そこにはまるで天使のような美しい少年が立っていた。
キラキラと輝く銀髪に、色違いの目。透き通るような白い肌にまだあどけなさがのこる顔。そして、リンゴのように赤い頬。
本気で天使が舞い降りたのかと思ってしまい、ぽぉっと彼を見た。
彼は必死な表情でこちらを見ていた。

「一目惚れしました!好きです!付き合ってくださいっ!」

「え、と・・・?」
何を言われたか、さっぱり理解できなかった。
ヒトメボレ?スキ?ツキアウ?
告白?これは告白なのか?
正直男から告白されたのは初めてでどうしても胸が高鳴った。
だが。

恐らく十以上年下の、十代半ばの少年は、さすがに対象外だ。

「あ、あー・・・ありがとな・・・」
自身が教えている生徒とそう変わらない男に泣き顔を見られ、慰められていると思うと恥ずかしい。
ハハッと笑うとさらに距離を縮めてきた。
「それって、付き合ってもいいってことですか?」
「いやいやいや。さすがにそれはちょっと・・・」
「好きなんです!一目惚れです!」
「いや、あのね」
「今付き合ってる人いないなら、考えてもらえませんか?」
付き合っている人。
確かにもういない。
だけどそれとこれとは別だと思う。
「あのね、えっと・・・」
「カカシです」
「カカシくん。年幾つ?」
「十五です」
あぁ、やっぱり十違う。
「俺はうみのイルカ。年は二十五だ。だから付き合えない」
「年が離れているからですか?」
「そうだ。それに俺はアカデミーで教員をしてる。君ぐらいの子はどうしても教え子とかぶってしまうから」
そう言うと見事にショックを受けた顔をして俯いた。
しまったと思わず口を押さえた。
あんなに優しくしてくれたのに。
見知らぬ大人に声をかけるのをどれだけ勇気がいったか、想像するだけでも胸が痛くなるのに。
無下にしてしまった。
「あのな・・・」
恐る恐る近づくと、彼の目からじわっと涙が溢れてきた。
ぽろぽろとまるで宝石のような涙が彼の目から溢れ出す。それは美しいが、みているだけで悲しくなるような泣き顔だった。
「ぅえ!?」
「とし、なんて、どうしようもないじゃないですか・・・っ。オレだって、できるならイルカさんと同じ年に生まれたかった・・・っ」
「いや、あのっ、カカカカカシくんっ!?」
「こんなに好きなのに・・・っ、そんな理由でフラれるなんて、オレっ、納得できません!」
そんなこと言われても・・・。
だけど本当に悲しそうに泣くから、このまま放置などできない。それが彼にとって期待させてしまうと分かっているがどうしようもない。
借りたハンカチを差し出すと、彼は受け取らずゴシゴシと服で拭った。
「オレは本気です!本気でイルカさんのことが好きです!ちゃんとオレを見てくださいっ!」
「えっと・・・」
「イルカさんから見たら子どもかもしれないけど、オレは真剣にイルカさんのことが好きです。好きな気持ちは年なんか関係ないです!むしろ大人よりずっとずっと強くて真剣です!」
かつてこれほどまで情熱的に想いを告げられたことがあっただろうか。
これほどの愛をくれた人がいるだろうか。
こんな小さな体から、全力で俺にぶつかってきてくれる。
なにより今日は、恋人に酷くフラれてしまった。寂しかった。悲しかった。
だからこそ、グラッと心が揺れてしまった。
一目惚れ。
綺麗な言葉だが、どうせ顔が好みだったのだろう。特に若い子は惚れっぽいし、一見頼りある年上が好きになる時期がある。
どうせすぐに飽きるだろう。

ちょっとぐらい、愛されてもいいじゃないか。
ちょっとぐらい、寂しさを埋めてもらってもいいじゃないか。

「でも、えっと・・・」
どこか逃げ口を探しながら、それでも捕まえてほしいような。どこか踏ん切りがつかず優柔不断にうじうじとしていると、ギュッと手を握られた。
「友だちからでいいです!まずは!」
その言葉に思わず、プッと笑ってしまう。
「十五と二十五の友だち?」
「じゃあ友だち以上恋人未満でいいです!」
「おいおい」
さっきより要求があがってるじゃないか。それでも真剣な表情で「いいんです!」と言い切る姿は子どもとは思えない潔さだ。
(恋人には、なれないけど・・・)
軽くなった心をそっと押さえる。
さっきまであんなに寂しくて悲しかったのに、今はドクドクと優しい鼓動に変わった。
彼の目は一度だって逸らさず、真剣に見てくれている。
その想いに、俺も返さないと失礼だ。
「恋人とは、とても思えない」
そう言うと一瞬傷ついた顔をした。慌てて、でもと続ける。

「友だちから、なら・・・」

えらく弱気で上から目線な答えだった。自分がひどくずるい大人に思えた。
だけど彼はギュッと俺のこと力いっぱい抱きしめてくれた。
「オレ、イルカさんに好かれる自信があります!絶対オレを選んだこと、後悔させません!それぐらい大好きなんです!誰よりも愛してます!」
わーいわーいとはしゃぐ彼は、俺よりも十センチ身長が低くて、声はまだ思春期独特のソプラノで、幼い顔して笑っている。
可愛らしくて、愛らしい。
(少しだけ、そばにいるだけだ・・・)
愛とか恋とか。
そんなものは分からないけど。

彼がこんなふうに笑ってくれるなら、それだけで俺は幸せだと思う。

「じゃあ、イルカさんの家まで送ります!」
「ハハハ。いいよ、俺おっさんだし。カカシくんの方こそ送るよ」
「オレの家ここから近いから嫌です。イルカさんの家の方が遠いから、その方が長く一緒にいれるでしょ?」
ニコニコと屈託のない笑顔で言われると年甲斐もなくときめいてしまう。こんな言葉さらっと言えるなんて末恐ろしいのだ。免疫のない人なんてイチコロだろう。
「それに、オレ彼氏だし」
誇らしげに。まるで大きな勲章のように。

そんなふうに言う人はこの世界にどれだけいるだろう。
そんなふうに言われる人はこの世界にどれだけいるのだろうか。

人気がない夜道を手を繋いで歩く。
月夜が彼の髪色のようにキラキラと輝く夜のことだった。



★☆☆☆☆



一目惚れだった。
暗部の控え室で男が自慢げに写真を見せびらかしていた。
「コレ、最近のお気に入り」
「はぁ?男?お前ついに男喰っちまったのか?」
ソイツはまぁ任務以外はどうしようもない奴で、だけど支障がないから放置してた。恋人もコロコロ変わって薄っぺらい奴だなぁと思っていた。
だが男という言葉に珍しいなと目を動かした。最近改革で同性愛者同士が結婚できるようになり、徐々に里でも大っぴらになってきた。
こんな身近でもそんな趣向の奴がいたのかと興味本位だった。
覗いたその写真には、黒髪の美しい人が照れたように笑っていた。


天使かと思った。



「カカシくん!?」
「えへへ。来ちゃった」
校門の前で待ってるとイルカさんが予想時刻ピッタリにやってきた。
今日彼の仕事が早く終わるのはきちんと調べていた。残業も持ち帰りの仕事がないことも、ちゃんと調べてある。
「もしかして、待っててくれたのか?」
「んー、十分ぐらい?子どもたちがいつもより早く帰ってたからもしかしたら会えるかなぁと思って」
調べたなんて知られたら気味が悪がられるし、かといって何時間も待っていたらそれも気持ち悪い。偶然を装った計算尽くした返答に、イルカさんはニコッと笑ってくれた。
可愛い。
凄く可愛い。
たったそれだけなのに、そんな嬉しそうな顔をして。だけど喜びすぎるのは恥ずかしいとすぐにキリッとした表情になって。
可愛い。
大好き。
「暑かっただろ。近くに上手い団子店あるんだけどどうかな?」
「本当!?行きます行きます!」
誘われるのも、もちろん想定内だ。
彼はよく教え子たちを奢っている。主には一楽のラーメンだが、ラーメンを食べるのにはまだ時間的に早い。それならきっと彼の好きな近くの団子屋に誘われるだろうと予想していた。
お茶に誘われて、のんびりして、それから夕食まで一緒にできたらいいなぁ、なんて。
予想通りの展開にニコニコしていると、団子が食べれるのが嬉しいのかと勘違いされた。本当イルカさんは鈍感だと思う。
席につき、メニューを眺める。
「お茶は渋いのが好きだな。団子は餡子にする」
すると吃驚したような顔をされた。
「俺と同じだ」
「え?ホント!?わー、オレたち似てますね!オレ珈琲は砂糖一個入れるんですけどお茶は渋めが好きなんですよ」
「俺もだよ。珈琲の苦味とお茶の渋味は違うよな」
「分かります!日中は珈琲ばっかり飲むんですけど偶に紅茶飲むと美味くて吃驚しませんか?」
「するする。但し一杯だけなんだよな。二杯目飲むと全然美味しくなくてまた吃驚する」
勿論これもリサーチ済みだ。
普段は珈琲はブラックだし、お茶はあっさりした方が好きだ。紅茶なんて全く飲まない。
だけど、イルカさんのことを調べて全て変えた。
こうやって趣味や趣向が合えば話も弾むし、何より恋人に求めるものに趣味趣向が合うのは必須って書いてあったからだ。
「オレたち好みが似てるんですね。嬉しいな」
そう言うとイルカさんも満更でもない顔で笑ってくれた。その顔すごく可愛い。

イルカさんは、愛されたいと強く願っている。

それは幼くして親を亡くしたのもあるし、同性愛者のせいでもある。
彼の過去の恋人たちは、よくもまあこんなクズたちを集めたなと言うほど酷かった。
浮気やDV、恐喝や窃盗。
それでも、イルカさんは尽くしていた。きっと好きとかそんなものではなく、おそらく同性愛者であるからだった。同性愛者は少ない。そして大ぴらにする人はそういないから慎重に探さなければならない。彼はひどくそれに引け目を感じ、周りに相談せず、衝動的に恋人を作った。作らずにはいられなかったのだろう。
それほど愛されたかったのだ。
ただ、世界を知らないから、近くにいた人を選んで、そういうヤツらはたいていクズで、だからこそ失敗ばかりしていた。
愛されたいと願って恋人を作ったのに、相手は真剣でもなんでもないから、満たされることはなかったのだろう。
オレだったら。
オレだったらうんと愛してあげるのに。
誰よりも愛して、欲しいだけ愛を与えてドロドロに甘やかしてあげるのに。
そのぐらい確かで強い愛を持っているのに。
なんで十も年下なのだろうか。
(クソ親父め。さっさとお袋孕ませればよかったのに・・・っ)
そしたらこんな回りくどいアプローチなどせず、きっと彼は喜んで恋人にしてくれたのに。
彼を調べてすぐ思い知った。
彼はきっと真面目で清らかで美しくて。
十も年下の十代の男なんて相手にしてもらえないと。
これが二十と三十なら話は別だ。彼は躊躇いながらも受け入れてくれるはずだ。
だけど教職をしている彼だからこそ十代は犯してはならないタブーの領域だ。真面目だからこそ。
かといってあと五年なんてとても待てない。
ならば無理だと分かっていても好きになってもらうしかない。
幸いにもオレには、誰にも負けないモノがある。
彼への愛と。

そして忍としての能力だ。

彼とファーストコンタクトをとった日。
あの日は計算尽くした出会いだった。
普通に出会って、彼との仲を進展するには無に等しい。告白しても笑われて相手にされないだけだ。
確実に、彼の中に入り込めないといけない。
そう考えた時一番に浮かんだのは失恋だ。
彼を失恋させる方法など、簡単だった。
失恋して、傷ついて。
愛されたいと願う彼が寂しくて寂しくて悲しんでる時に優しく強い愛をぶつける。欲しがっていた愛をこれでもかと与える。
きっと絆されてはくれないだろう。

だけど確実に彼の心に入り込める。


「最近『わんにゃん動物園』にハマってて、イルカさん見てます?」
「あ、見てる見てる。毎回可愛いよな」
もちろんリサーチ済みだ。これは元々好きだったから嬉しかった。
「良かった。オレ大好きなんですよ。こないだのパグ犬可愛くないですか?」
「子犬のやつだろ。ぶさ可愛いよな!俺パグ犬好きなんだ」
これは知らなかった情報だ。嬉しくて思わず心が踊る。
「オレもなんです!こんなに好きなモノが合うなんて、オレたちベストカップルですね」
「アハハハ。そうだな」
そこは軽く流されてしまった。
「オレ、パグ犬飼ってるんです。忍犬でもうずっと相棒で。よかったら見に来てください」
「そうなのか。そりゃ是非見たいな」
予想通りの展開に思わず心の中でガッツポーズをする。ちょろすぎて心配になるぐらい作戦どおりだ。
これでオレの家に誘い出すきっかけができた。散歩と称してイルカさんの家の前に彷徨いても不振がられない理由もできた。これから先おおいに利用できるだろう。
そうしているうちに団子とお茶がきた。
餡子たっぷりの団子を前に顔を顰めそうになる。
甘いものは苦手だ。餡子など甘ったるくて特に苦手だ。
だけどイルカさんが好きだから。
同じものを食べて趣向が同じだと思ってもらわないと。
そうでなければ次誘ってもらえないかもしれないのだ。
思い切って口に入れる。甘ったるい味が口の中いっぱいにへばりついた。
「お、いしいね・・・」
団子は残り二つ。早くもギブアップしそうになる。
そんな中イルカさんは好物なのでパクパクと嬉しそうに食べている。かぶりつく顔は男らしいのに、頬いっぱい詰め込む姿はリスのように愛らしい。
本当に可愛い。天使。
あーもー見てるだけで和むなぁ。ずっと一緒に食べていたいなぁ。一緒に暮らしてくれないかなぁ。同性同士でも結婚できるようになったから結婚したいなぁ。
「カカシくん、ぼんやりしてどうしたの?」
あまりにも見すぎたので不審がられてしまった。慌てて首を振り、団子を一つ口に入れた。
やっぱり甘い。甘すぎる。
塩でもぶっかけようか。いや塩かけるとさらに甘みが増すらしいから逆効果か。
あと一個、あと一個だ。
中々飲み込めないでいる中、ギッと残りの団子を睨んだ。
これさえ食べてしまえば、この後街中ぶらついて、夕飯を一緒に食べれるんだ。
お茶で流し込むと、一息ついた。渋めのお茶で助かった。口の中が清掃された。
よしっと気合いを入れて、食べようとすると。
「カカシくん」と呼ばれた。
え?と顔をあげるとイルカさんはオレの手を取って、オレが持ってる団子を食べた。
(間接キス・・・・・・)
「いやーすまんすまん。カカシくんが食べてるのを見たらつい食べたくなって。もう一個奢ってあげるよ。他にどれが好きなんだ?」
「え・・・っと、みたらし」
唯一食べれるのをつい答えると彼は満足げに笑った。
「へぇ、俺食べたことないな。一つちょうだいな」
そういうとみたらし団子を注文してくれた。
届いた団子を持って、彼に差し出すと口でパクッと食べた。
とろりとしたタレが、彼の口の中に入っていく様はひどく卑猥だった。
「うん。美味い。みたらしのタレって砂糖と醤油だからなんかそんなものに金出すの勿体なくて食わなかったけだ美味いな。カカシくんがいてくれたから食べれて良かったよ」
「う、ん・・・」
「カカシくんも食べて食べて」
「うん・・・」
(間接キス間接キス間接キス間接キス間接キス間接キス・・・)
頭の中はアホみたいにお祭り騒ぎで食べても味など分からなかった。ただ、イルカさんはニコニコと笑い、オレは無事に完食できた。

計算違いだ。

オレが、イルカさんをメロメロにしようと思ったのに。
共通の接点で盛り上がり、親睦を深めて、そして男らしいとこ見せて惚れさすつもりだったのに。
なのに、なんでオレがもっとイルカさんにメロメロにされてしまうのだろう。
恐らく餡子が苦手なのはバレてしまったのだろう。それなのに指摘して恥をかかせるのではなくわざと自分で食べて新しいのに取り替えてくれた。
優しい。なんて優しい人だろう。
これ以上好きになれないぐらい好きなのに。
彼を知れば知るほどもっともっと好きになる。
もう好き好き。大好きだ。
「美味しかったな。また来ような」
「はい」
危惧していたこともなく、次の約束までしてくれた。これが恋愛感情なら嬉しいけど、そうでないのは明白だ。全然オレ、カッコよくなかった。
それでもイルカさんはニコニコと笑ってるし、約束もできたし、結果オーライかもしれない。
「イルカさん、ここタレがついてる」
「え?どこ?」
「口のとこ」
そっと手を伸ばし、口の端に付いたタレをとった。
そしてそのままペロッと指を舐めた。
「えへへ、美味しい」
(唇触っちゃった)
肉厚の唇に偶然触れられてご機嫌になる。しばらく手を洗えないなとこっそり触れた指を見ていた。

おかげで彼が真っ赤な顔をしているのを見逃してしまった。



★★☆☆☆



カカシくんは末恐ろしい子どもだと思う。

「イルカさん。今度の休み、一緒にピクニック行きませんか?オレの忍犬と一緒に」
無邪気に笑う姿は年相応でとても可愛いらしい。全幅の信頼を寄せているのだと実感できて嬉しくもある。
恋愛かどうかは置いといて、本気で俺のこと好いてくれていて、好かれようと必死な姿は愛らしい。
だけど。
「イルカさん?」
不安そうに上目遣いで見られて、慌てて首を振る。
「そりゃ楽しみだな。休みが合えばいいけど」
「合わせます!絶対合わせます!」
簡単に言いのける彼は、きっと言葉通りにやり遂げるだろう。
彼のことを少しだけ調べた。
深い意味はなく、ただただ何をしているのか知りたかったからだ。彼に聞いたが曖昧な答えだったのでもしやと思うことがあった。
調べれば明白だった。
彼はかなりの有名人で、天才だった。
あのはたけサクモの子どもで、三年前に上忍になった。今曖昧な答えを言わざるを得ないのは恐らく暗部に所属しているのだろう。
こんな子どもが。
きっと俺なんかより過酷で死と隣り合わせの危険な日々を過ごしているのだろう。そう思うと胸が痛い。
子どもなんてそんなこと軽々しく言えやしない。
そしてもう一つ困ったことがある。
彼は美しい。
天使のように人離れした美しさの中に、時々ひどく妖艶な色気を感じる時がある。
こないだ団子を一緒に食べた時、口についていたタレを彼が拭ってくれた。
そのタレをペロッと舐めた時の顔が。
今思い出しても赤面しそうなほどいやらしかった。
きっとあと数年もすれば人々を魅了する人になるだろう。
実はイケメン好き(このせいでたいてい痛い目にあう。イケメンは性格が最悪の人が多いから)の俺としては、タイプど真ん中なのだ。
(いや!絶対十代は手をださないけど!)
なら二十歳ならどうだろう。あと五年後彼が告白してくれれば。
(二十歳の、カカシくんか・・・)
想像するとブルッと震えてしまう。きっともっとイイ男になっているだろう。
そんな人が俺を好きだと言ってくれたら。
きっと俺は受け入れているだろう。
まぁきっとその頃だときっとたくさんの人に好かれ、世界を知り、俺なんか相手にされないだろうが。
そう考えるとまだ世界を知らない今の彼と出会えたのは良かったのかもしれない。
そんなこんなで、彼と会うと中々複雑な心境になる。
だけど彼とは驚くほど趣向が合う。食べ物も趣味も好みも。偶に無理して合わせていることもあるがそれはそれで可愛く、ジェネレーションギャップもなく会話が弾むのはなんだか運命的だ。そして何よりこんなに全身で好意をぶつけてもらうのは嬉しくてついつい会ってしまうのだ。
「イルカさんの好きって言ってたパグ犬の他にも色んな種類の犬がいてみんな可愛いんですよ」
デレデレと語る姿を見ていると本当に好きなのだろうなと思った。彼はとりわけ犬の話しになるとイキイキしながら語ってくれるので、それ見たさについつい話題をふってしまう。
「じゃあ俺が弁当作るよ」
「えぇ!?いいんですか!」
思いのほか喜んでくれた。たかが男の手料理なのに、手料理手料理!とはしゃいでいる。
「じゃあ休み決まったら連絡しますから!絶対行きましょうね!」
そんなことでこんなにもはしゃいでくれる。そんな彼が、堪らなく愛おしい。


次の休み、本当に彼は都合を合わせた。
恐らく忙しいところに所属しているのに、どうやって休みをもぎ取ったのだろうか。気になるがきっと教えてはくれないだろう。
彼の秘密の場所に案内された。それは綺麗な湖のある森の中だった。
「綺麗なところだな」
「そうでしょ?ここだと人目がつかなくて静かで好きなんです。オレの秘密の場所。誰も入らせないの。だけどイルカさんならいつでも来てくださいね」
そう言って、いとも簡単に特別扱いする。故意か天然か、まだ分からないでいた。
連れてきた忍犬たちと遊んだり、水浴びしたりした。俺も最初は一緒になって遊んでいたが、とてもじゃないが実力の違いを見せられ、今は休憩している。俺には見えない速さで高速鬼ごっことか子どもらしいのかそうでないのか分からない。だけど忍犬たちと一緒になってはしゃぐカカシくんは年相応で、まるで兄弟のように親密な関係が見えた。
忍犬たちをとても大事にしているのがよく分かった。
(可愛いなぁ)
その中からパグ犬が、こっちに向かってきた。
はしゃぐのに疲れたのか俺の隣に思い腰を下ろした。
「やれやれ。みんなしてはしゃいで疲れたわ」
「お疲れさま、パックン」
「おぬしも大変じゃの」
はぁーとため息をする姿は彼の顔に似合っていて少し笑ってしまった。
「どうじゃ。カカシとの仲は進んでおるか」
「え?・・・・・・え?」
「最近それしかカカシは言わんから心配しておる」
犬に心配されてしまった。
詳しくは聞いてないけど、彼の口からあまり友人の名前が出ない。いないのかも知れない。きっと相談相手も彼らが担っているのだろうな。
「ん、んー、んー・・・」
他人から言われるのも恥ずかしいが、犬から言われるのも恥ずかしい。
「まぁ、どうかな」
「番になるなら早めが良いと思うぞ」
「つがっ!?」
「結納はどうする?はたけ家は面倒なしきたりがあったはず。準備がいるから早目に教えてくれ」
「結納っ!?」
「幼き頃から炊事洗濯掃除ときちんとできるようにしておる。安心して嫁に来るが良い」
「嫁っ!?いや、ちょっと待ってくれ」
そこまで話が進んでいるか。まだ付き合ってもいないのに。
「俺たちはまだそんな関係じゃない」
「カカシのことが嫌いなのか?」
「いや、嫌いじゃないけど・・・」
「ならば良いではないか。アレは父親に似てこれと思ったら絶対譲らん。父親も一目惚れしたあやつの母親を口説き落として結婚したものじゃ。一途と言えば聞こえがいいが執着心は人一倍だからのぉ。未来永劫離さんと思うぞ」
「え?・・・・・・え?」
恐ろしいことを他人(犬?)の口からサラッと言われた気がする。
「まぁ末永くよろしく頼む。これはほんの気持ちじゃ」
そう言って懐から紙を取り出した。もしかして賄賂か!?と思ったが紙切れのようだった。思わず受け取る。
「こ、これは・・・!?」
それは一枚の写真だった。
写っているのはおそらく三歳ぐらいの銀髪の子ども。
カカシくんの幼少期だった。
照れたような顔で苦無と犬のぬいぐるみを持ってる。
(可愛い・・・っ)
今の姿もだが、この頃も天使のような愛らしさがある。
「サクモもカカシも写真が趣味で家には山ほどある。もっと見たければいつでも家に来てやってくれ。カカシも喜ぶ」
それは、・・・是非見たい。
今度お願いしてみようかなぁと思っているあたり、まんまとパックンの作戦に嵌っている。
「あれー、二人で何してるの?」
あれだけ走り回っていて全然息も切らしてなければ汗もかいていないカカシくんが俺の隣に立っていた。やましくは全然ないのだが、思わず写真を隠した。
「何隠したの?」
ばっちりバレている。
「いやーアハハ」
「あー、誤魔化そうとしてる。何なに?」
「ちょっ、カカシくんっ!」
隠せば隠すだけ、彼は必死になって見ようとする。
あまりの強さにバランスを崩して倒れた。彼も一緒に覆いかぶさるように倒れた。
(これが噂の床ドン・・・)
まさかされる日がくるとは。
彼の顔が真上にあり、髪が頬に触れるほど近い。
一瞬見つめ合うと、慌てて彼が離れた。
「わわわっ、ごめんなさい!」
「あ、いや・・・」
「べべべつに押し倒そうとか、まだそんなこと思ってないから!今のは狙ってたわけじゃなくて偶然でっ!」
「分かってる分かってる」
「でもせっかくなら偶然を装ってちゅーすればよかった!悔しい!」
本音がダダ漏れである。
「野外で交尾すると汚れて大変じゃぞ。家に帰るか?」
パックンはヤレヤレという顔で覗き込んできた。
いや、今のセリフは完全におかしい。慌てて飛び起きる。
「違うから!パックン違うから!」
「布団がいるのか?仕方ない取りに帰ってやろう。おいブル」
「待って!パックン待ってくれ!」
「最初の夜は夜景の綺麗なスイートルームって決めてるから!予約入れてないから待って!」
「カカシくん違うから!落ち着いて!」
「野外はマンネリ化してからがいいですよね!大丈夫です!分かってますから!」
「違う違う。全部間違ってる!」
「プロレスごっこ?」
「やるやる~」
しっちゃかめっちゃかになり揉みくちゃにされ、気づけばまた高速鬼ごっこをしていた。すごく疲れた。
「カカシくん、そろそろお昼にしようか」
「はぁい」
嬉しそうにブルーシートを広げた。パックンたちの餌をあげるとウキウキした表情で弁当の前に座る。
「イルカさんの手作り弁当!」
「そんな大したことないから期待しないでくれよ」
蓋をあけると小さな歓声が上がった。
「すごーい。美味しそうですね!」
「カカシくん魚好きだろ。いい魚が手に入ったんだ」
そういうと吃驚した顔をした。
「・・・・・・オレ、言いましたっけ?」
「え?いや、言ってないけど、よく魚選ぶから。・・・違ってたか?」
「・・・・・・いえ」
「綺麗に魚食べるだろ。若いのに感心だなって思ってさ。俺のクラスの子なんて全然食べれなくて少しはカカシくん見習ってほしいよ」
いつも見事に綺麗に食べるカカシくんを見ていた。綺麗な箸使いだ。礼儀正しいし、きっと彼の周りの人たちの教育のたわものだろう。
どれだけ周りに愛されてきたのだろうか。そう思うと胸が熱い。
「イルカさんはよく見てますね」
「職業柄ついな」
「そうやっていつも目の前の人を大事にしてるとこ、好きです」
にこっとはにかんだ様に笑う。笑うと本当に可愛らしい。そしてそれを見るだけでこちらを幸せにしてくれる。
彼もそうだといいのに。
そう思いながら俺も笑った。


さすが育ち盛り、あんなにあった弁当を綺麗に食べた。
パックンたちは昼寝をしだし、カカシくんも膝枕をねだった。
心地よい風が吹く。
「すごく楽しいですね」
夢心地のようなふわふわとした声で言った。
「そうだな」
俺の声もふわふわとしている。
「また来ましょうね。また弁当作って。うんん、今度はオレが作ります」
「そりゃ楽しみだ」
「他にもまだ秘密の場所あるんですよ。郊外にあるオレん家の庭も春には花盛りになるんですよ。それとも温泉行きませんか?オレ温泉好きなんですよ」
「本当カカシくんとは趣味が合うなぁ。俺も温泉好きなんだよ」
そう言うと目をキラキラさせた。
「きっとオレたち運命の恋人なんですよ。こんなに趣味が合う人なんていないですよ。だってオレ、イルカさんの嫌いなとこ一つもないですもん。すごくないですか!普通嫌いなところ一つぐらいあるのにイルカさんは全然ないんですよ!これって運命ですよね!」
「カカシくんは俺を美化しすぎだよ。俺そんな大した人じゃないぞ。おっさんだし」
「イルカさんはただのおっさんじゃありません!この世で一番可愛いおっさんです!」
「何だそれは」
面白いフォローだなと笑ってしまう。クスクスと笑うとぶぅと頬をふくらませた。子どもらしい表情に益々笑ってしまう。するとふと何か思いついたように彼の表情が変わった。
「イルカさんは?」
「ん?」

「イルカさんは、オレの嫌いなところありますか?」

嫌いなところ?
そう言われて、真剣に考える。
嫌いなところ、嫌いなところ。
(あ、れ・・・?)
おかしい。

一つも浮かばない。

「え、そんな考えることですか!?あるなら言ってください。オレ直しますから!」
「あ、いやえっと・・・」
戸惑う俺を見てどこか泣きそうなカカシくんが詰め寄る。違うと言いたいのに、上手い言葉が見つからない。
「背が低いとこですか?それともグイグイ行き過ぎなとこ?ウザイですかオレ?それとも嫉妬深いとか!?」
「そ、そんなことないよ」
「やっぱり年下ってところがネック?頼りないですか?包容力と大人の魅力?そういうのは年とともに落ち着くらしいから!あと身長は今牛乳飲んで頑張ってます!」
身長のこと二回言った。気にしたことないけど彼は俺より低いことを気にしているみたいだ。男だしまだまだ伸びるだろうに。
「あのね、カカシくん」
嫌いなところなんて一つもないよ。
そう言おうとした瞬間、ピリッと彼の表情が変わった。彼だけではなく、忍犬たちも一斉に身構えた。
チッと舌打ちの音が聞こえる。
「邪魔しやがって」
あまりに聞きなれない、低く冷たい声に一瞬誰の声か分からなかった。
「カカシく」
「パックンとビスケはここに残ってイルカさん守って」
鋭い目でパックンたちを見る。彼らは慣れているのかすぐに俺の近くで待機する。
そこでようやく俺にも状況を把握した。
「応援に」
「オレが行く。イルカさんはここにいて」
「でも・・・」
「ジャマ」
バッサリと言い切った。
その一言で俺に有無を言わせなくする。
分かってる。今はっきりと実力の差を見た。俺はどう見たって足でまといだ。
「いい?死んでもイルカさんを守ること」
「分かっておる」
それだけ言うと、その場から一瞬にして消えた。
俺も苦無を身構える。
「そんな身構えなくてよい。恐らく一時間で片がつく」
「・・・・・・そうか」
恐らくどんな敵か分からない時点で俺に出来ることはないのだろう。
彼はきっと、そんな世界にいるのだ。
今までも。
これからも。


一時間もかからないわずかな時間で、彼は帰ってきた。私服に赤いシミが付いている。
「カカシくん!」
「平気。全部返り血だから」
乱暴な仕草でガシガシと髪をかいた。
「あークソ。せっかくのデートだったのに・・・っ。今日の担当の奴コロス」
「そう言うな。無事でよかったよ」
そう言っても彼の不機嫌さは直らなかった。そのまま上着を脱ぎ、頭から湖に入った。バシャバシャと乱暴な様子で頭と上半身を洗っている。もしかしたら、任務で汚れた時のための秘密の場所なのかもしれない。そう思うとこの綺麗な場所がなんだか寂しく思えた。
持っていたタオルを渡す。すっかり血と汚れは落ちていた。
「イルカさんには汚れてる姿見せたくなかったのに・・・っ」
ブスッとしながらそんなことを言った。
何だそんなこと気にしていたのか。別にそんなこと気にしないのに。カカシくんは偶に神経質というか、俺のことまるで生娘みたいに扱う。実際は彼よりも十も年上のおっさんなのに。
「そんなことしなくても・・・」
カッコイイよ。
そう言ってあげようと、彼を見た瞬間。

水に濡れ、キラキラと光る髪。
その髪をかきあげる仕草。
ギラギラと興奮しながらもどこか気だるげな目。
透き通るような肌に、鍛え上げられた身体。
大人と呼ぶには幼く、子どもと呼ぶには大人びた表情。

その全てから漂う、異常な色気。


カッコイイなど、そんな軽い言葉では言い表せない。


(う、わ・・・っ)
直視できなくて俯いた。かぁぁっと顔が熱くなるのを感じる。
ヤバい。ヤバいヤバい。
俺は大人で教師なのだ。
絶対手なんて出せないのに。

体に染み付いてる本能が、彼を惹き付けて止まない。
このまま膝を折り、彼の手をとって愛を乞いたいと願って止まない。

「イルカさん?」
彼の声が近付いてくる。
ダメだ。今はダメだ。
「どうしたんですか?」
彼が近づけば、俺は。


俺は。
おかしくなる。


それは条件反射のように。
心配して伸ばした彼の腕をはらった。

パンッと乾いた音が辺りに響く。
しまったと思うには遅すぎた。
はらわれた彼の手が宙を舞う。
それを、どこか寂しげにカカシくんは見ていた。
「ご、ごめんっ」
謝ってみたところでそれはただの音だった。
意味のないただの自己満足の音だった。
カカシくんは静かに俯いた。
表情は見えないが、悲愴感漂う顔をしているのは明白だった。
「オレ、汚いですか」
「カカシくん」
「汚れ仕事しかしてないオレなんか触れる資格ないですか」
「カカシくん」
「血で汚れたオレはイルカさんには似合わないですか」
「カカシくんっ!!」
ああ、もう。くそ。
くそくそくそくそくそっ。

なんて顔して泣いているんだよ。
そんな寂しそうな顔して。
それなのにキラキラと輝いていて。
鼻水垂らして、顔グシャグシャなのに。
なんで。

なんでそんな可愛いんだよ。
天使かっ!

辛抱ならん!と抱きついた。少し高めの体温が心地よい。俺より少し低い背は、抱きしめれば丁度頬に髪が当たる。ふわふわとしたその髪はまるで雲のようだった。
「カカシくんはカッコイイよ。姿も忍としての力も生き様も。俺なんかよりずっとずっとカッコイイ。汚れたなんて傷つく意味はない。君は誰もが憧れる存在だよ。俺はいつだって見惚れるぐらいカッコイイ」
「ホント・・・?」
恐る恐る聞く彼が可愛くて大袈裟なほど頷いた。
「当たり前だよ。俺はずっと思ってたのに、そんなことも知らなかったのか?」
得意げに言うと、一瞬ポカンとして、そしてギュッと笑った。
カカシくんはきっと誰からも愛される人だ。
誰もを魅了し虜にするだろう。
単純な俺なんてイチコロだ。
「カッコイイ?」
「うん。カカシくんはカッコイイよ」
「イルカさんが出会った中で誰よりも?」
「うんうん」
そう言うとたちまち顔を輝かせた。良かった。機嫌が直ったみたいだ。体を密着させたまま彼が上目遣いで見てくる。
「元カレたちよりも?」
「うんうん」
「イルカさんイケメン好きだもんね」
「うんうん」
「その中でも一番カッコイイ?」
「うんうん」
「ってことは、オレのこと大好きなんだよね!」
「うん・・・ぅ?」
何だか調子に乗って頷いたが、途中から変ではなかったか?
あれ?俺なんて言ったっけ?
必死でさっきの会話を思い出していると、カカシくんは嬉しそうにぎゅうぎゅう抱きしめた。
「あれ?あの・・・カカシくん・・・?」
「なんじゃ。やはり結婚するのか」
いつの間にかパックンたちが足元に集まってきていた。
「式場はどうするのだ?火の国ホテルなら今から押さえておくぞ」
「待ってくれ!パックンちょっと待ってくれ!」
「イルカの荷物入れないと」
「引越し引越し」
「仲人はどうする?三代目に頼むのか?」
「ウーヘイ、敷物は今いらない。何に使うんだ。しないから、寝転がる必要ないから。ビスケ、どこへ行くんだ。ホテルも三代目のことにも行かなくていいから。いや、自分で伝えるとかじゃない。色々誤解だ」
「オレは、ウエディングドレスでも白無垢でもっ!」
「カカシくん一回ちゃんと話し合おう、な?」
「新婚旅行はイルカさんがずっと行きたがっていた水の国の高級旅館に行きましょう!」
「一回説明させてくれ!」
「プロレスごっこ?」
「やるやる~」
しっちゃかめっちゃかになり揉みくちゃにされ、気づけばまたまた高速鬼ごっこをしていた。
すごく疲れた。



おかげでカカシくんに、

俺もカカシくんのこと嫌いなとこなんて一つもないよ。すごいよな。
本当に運命みたいだ。

なんてクサいこと言い忘れてしまった。
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