※初夜のカカシ視点


手紙を書く時、いつも気をつけていることがある。
長くなりすぎないように。
重くならないように。
少しでも好意を持ってもらえるように。
手紙なんて報告文書しか書いた事は無かったが、イルカ先生相手だと自然とスラスラと書けた。
どんなに疲れても、辛くても、こうやって手紙を書くだけて救われる気がする。そんな存在が、オレにはいるんだ。
恋人として。
「・・・ふふっ」
恋人という甘い響きに頬が緩むのを感じた。
オレの世界を変えてくれた神さまみたいな人が今恋人と名前を変えてそばにいてくれる。

『アンタが好きだからに決まっているじゃないですか』

今でもあのセリフが、オレを奮い立たせる。
こんな所で死んでたまらるか。ようやく、ようやく望んだポジションに、本当の恋人になれたのに。
早く帰りたい。
里へ、彼のいる場所へ。
そうやって死に物狂いで生き抜いた。激戦区と呼ばれる戦地だったが、ようやく終焉した。
これで、誰にも邪魔されない。
里へ帰れば、彼を抱きしめられる。
ようやく彼に帰還の報告が出来ることをどこか誇らしく感じながら手紙を出した。
すると同じように手紙を持った部下が数名ポストの前で立っていた。
「隊長!」
最初来た時は皆絶望し、気力のない顔をしていたが、状況が良くなっていくと希望の光を目に宿していた。今はようやく解放された喜びに満ち溢れていて、見ているだけで嬉しい。
「隊長も、手紙ですか」
「うん、・・・恋人に」
そう言うと照れくさいが堪らなく嬉しい。
彼のことを胸を張って堂々と、恋人、と呼べる自分が誇らしかった。
「隊長はマメですね」
「毎回出してますね」
「ハハ、書くだけでなんだか幸せでね。でももう終わりだねぇ」
この手紙でしばらく無縁の生活になるだろう。普段は式ばかり使っているので新鮮だった。
「ようやく、帰れますね」
「そうだね」
「・・・俺、もう二度と里へは帰れないって思ってました。だけど家族養うためにはこれしかないと・・・っ」
そう言いながら泣く。周りも同じなのか涙ぐんだ。
「だけど、隊長が来てくれてたお陰で、オレは俺は胸張って里に帰れます」
「俺もです。あのはたけカカシと一緒に生き抜いたんだぞって自慢します」
「・・・ウン」
なんだかやっぱり恥ずかしい。だけど嬉しい。
褒められるのは昔は苦手だった。そんな価値オレにはないと思っていた。
だけど、今は違う。
イルカに恋人にしてもらえるほどの、価値がある人間になったのだ。
だから自分を褒められると、まるでそうしてくれたイルカ先生が褒められているみたいで、むず痒くて堪らない。
「おぉい!郵便の時間だぞ」
届いた郵便を配っていく。周りにいた部下たちも嬉しそうにしながらそちらに行った。
きっと。
きっと送った手紙のように想いの詰まった手紙が返ってくるのだろう。

オレには一通もこないが。

それをどこかで悲しんでいる自分が嫌だった。
元々手紙をくれるような人ではない。忙しい人だし、便箋などなさそうだ。
そんなこと昔は望んでなどいなかったのに。
恋人になった途端、そんなこと思う自分がひどく浅ましくて嫌いだ。
別になくてもいい。
ただオレの手紙が届いて、オレの気持ちが届けばいい。


先生。
書けない言葉があった。

オレのこと、まだ好きでいてくれてますか?



◇◇◇



久々に戻った里は、ひどく懐かしく感じた。
たった半年だ。それ以上長く里を離れていたことだって何度もあるのに、不思議だった。
ホッと息を吐くと、遠くのほうから声がした。
「あんた!あんたぁ!」
女の悲鳴のような声だった。振り返ると若い女性が腕に子どもを抱きながら近づいてくる。
「チカ!」
部隊の一人が駆け寄る。おそらく話していた妻と子どもだろう。家族を守るために激戦区に志願したと言っていた。
幸せそうに抱き合いながら泣きじゃくる三人を見てじんわりと心が温かくなる。あの家族の幸せが途切れることなく繋がれていくことが、他人事ながら嬉しく思う。
辺りを見渡すと次々と人だかりになり部隊はバラバラと散っていく。
みんな家族の元へと駆け寄る。
幸せそうに。
幸せそうに。
その姿は見ているだけで幸福でひどく安堵するのに、どこか切なく感じる。
いや切ないのではない。
似ているけど、イコールではない。
胸を鷲掴みにされ、鼻の奥がツンとする。悲しくないのに泣きたくなる。じわじわと名もしれない感情がつま先から溢れ出してくるような不思議な感覚だった。
誰もがみんな帰る場所があるのだ。
帰りを待っている人が、無事に帰ると泣いてくれる人がいるのだ。
(オレだって・・・っ)
オレだって、いる。
大事な大事な人がいる。
今まではただ言われるがままに任務をし、報告するために里に帰ってきていた。待ってくれる人などいない。誰もがオレの帰還なんて喜んでくれないし、オレも望んでいなかった。
だけど今は違う。
きっと無事に帰ってきたら喜んでくれる人がいる。
「お疲れさまです、無事で良かった」と笑ってくれる人がいる。

オレはそんな人をようやく手に入れたんだ。


この任務と引き換えに。


ガリッと無意識に奥歯を噛み締めた。
まるで生贄のような考えに思わず叫びそうになる。
違う、そんなわけない。
先生は、オレのこと好きだから。
だから応えてくれたんだ。
『アンタが好きだからに決まっているじゃないですか』
大丈夫。
自分に言い聞かせるように強く強く思う。
大丈夫。
先生はオレのこと好きだ。好きだ。
忙しい人だから。きっと今日もアカデミーで、受付で、仕事しているだけだから。
あの部屋に行こう。
先生の部屋。
きっとオレのこと迎えてくれる。オレの帰還を喜んでくれる。
早く帰ろう。
「報告しておくから」
誰に言うでもなくそう呟くとその場を後にした。



「任務完了しました」
報告書を仕上げ、綱手様に会いに行くと、良くやったと笑った。
「あの任務からまさか生還するなんてねぇ」
「人手を割いてもらって感謝しています」
「にしたって、死者ゼロで、半年。全くお前の優秀さは予測不可能だよ」
そう言いながら必死でまとめた報告書をポイッと投げた。きっとこの後あの書類の山に埋もれていくことは容易に想像できたが、何も言わなかった。
「・・・本気なんだねぇ」
その言葉は任務のことではなかった。
「そんなに好きなのかい?」
「綱手様の世界は何で回ってますか?」
その問に綱手様は目を開いた。
「例えば敵を殺す時、これで先生への脅威が一つ減ったと思うし、人を欺く時、先生が見なくていい汚い世界を一つ減らせたと思う。子どもを見たら先生ならきっと笑いかけるだろうと思うし、花を見たら先生から教えてもらった名前と成分を思い出す。そんな風にオレの世界の中心には先生がいて、それだけでどんな嫌なことも、悲しいことも、腹立たしいことも、全部浄化されて受け入れられる」
先生に会うまでは、全ての感情を流していた。何をしても、何をされても、何も感じない。それでただ生きていた。
だけど先生に会って。
嬉しいことは笑い、悲しいことは泣き、腹立たしいことは怒り。そんな人間らしい当たり前のことを当たり前だと誇らしげに生きている。
それが羨ましくて、同じ世界が見たくて。
彼と同じように笑ってみたり泣いてみたりしていたら。

世界はこんなにも尊くて、美しいのだと初めて知ったのだ。
世界にあの人がいるだけで、こんなにも変わるのだと初めて知った。

「だからよく周りから言われる立場の違いとか、性別とか、そんなことどうしてこだわるのか分からない。そんな小さなこと、世界を前にしたらどうでもいいことなのに」
オレの世界が彼なのに。
それを失うことは、世界がなくなるのと同じなのに。
世界がなくなれば。

生きていけないのを誰でもないオレがよく知っているのに。

それを必死に守って何が悪い。
「どうして皆はオレを殺したがるのでしょうか」
それが不思議でたまらない。
はぁっとため息をつくと、綱手様は目をそらし、同じようにため息をついた。
「普通の人は、世界は特定の人ではないんだよ」
「じゃあオレは普通の人ではないんでしょう」
元々、人形みたいなものだったし。今更普通を当てはめてみたところで同じだとは思えない。
「そうだね。それだけの話だったってことだろうね」
綱手様はもうオレのことなど構ってられないとでも言うかのように書類を上げては下げ、上げては下げた。
「私は何にもしてやれないが何にも言わないよ。ジジババは自分でなんとかしな」
「ありがとうございます」
それだけ言われればいいだろう。本来ならば子孫を残す義務があるはずなのに、黙認してくれるのだから。
邪魔さえければ、理解されなくてもいい。
正しいことだと、認めてくれなくたっていい。
祝福なんていらない。



「なぜ、そんな愚かなことを」
何人目かになる言葉にまたかと思ってしまう。
よくもまぁ揃いも揃って同じことばかり言うのか。
身内でもなければ、仲間でもないくせに。
「お前は優秀なのに。今まで里に尽くしていたのに、どうしてそこまで逆らう。たかが男ひとりにどうしてこう腑抜けになったのだ」
「あとは妻子を持てば、文句のつけようもない完璧なのに。火影だって夢ではない。みんなに慕われ、里の長になれるはずなのに」
「里への忠誠心はどうした!里に生まれたからには里に従え!それがツトメだ!」
「一時期の熱に魘されても、後で気がついた時後悔するぞ。年寄りの忠告は素直に聞きなさい」
それでも、オレができるのは頭を下げるだけだ。
納得なんか到底してはくれないだろうが、黙認さえしてくれればいい。そうでないとまた半年前の二の舞になる。
そしたらまた、あの人を傷つける。
あの人はきっとひどい罵声も受け止め、浄化してしまうだろう。だけど傷つかないわけではない。きっと傷つき、憤慨し、悲しむだろう。それが嫌だ。嫌だ。
オレの愛しい人が、傷つくのは、嫌だ。
それは当然の感情だろ?

「カカシ。お前が感じてる愛だの恋だの、そんなもの全て幻想だ。そんなもの大事にして何になる?」

どうして。
どうして皆揃いも揃ってこの恋を汚したがるのだろう。
オレはこの世で一番価値のあるものを手に入れたはずなのに。
それは間違いだって責める。おかしいと咎める。やめろと罵倒する。
こんなに綺麗でキラキラと光るオレの宝物なのに。
皆がそれを汚していく。
どす黒く、穢らわしいものにしていく。
本当にあの人このことが好きだけなのに。
こんな気持ち初めてなのに。
こんなに幸せを感じてるのに。
でも。
先生がオレのこと好きだって言ってくれた。
先生が言ってくれたのだ。
オレの気持ちを受け入れてくれ、その上で同じだと言ってくれた。

だから、これは間違いなんかじゃない。
ねぇ、先生。そうでしょ?
早くそうだと言ってほしい。
あの大好きな声で。

「約束、ですよ」
上層部の連中に頭を下げ、罵倒され、そして静かに言った。
約束だと。
オレは、それを守って、そして帰ってきたのだ。
だから誰も何も言わせやしない。
ギロッと睨むとある者は怯え、ある者は憤慨し、ある者は呆れられた。
だけどもう交わす言葉はなかった。
「これからも里には尽くします。ただ、オレとあの人は諦めてください」
きっとこの先何度も釘を刺さないといけないだろう。彼らが仕掛けてくる前に。
後ろからため息が聞こえる。
ため息をつきたいのはオレだ。
今まで何一つしてはくれなかったのに。それでも一生懸命務めてきたのに。
レールをはみ出た瞬間、迫害される。
父のように。
父のように。
(ああ、そうか・・・)
父の時には怒れなかった。悲しみさえ押し殺していた。
それを表す仕方が分からなかった。
人はそれを憐れと呼んだ。
だけど、今は違う。自然とできるのだ。
イルカ先生のおかげで。
(ほら、間違ってない)
オレの世界は、あの人だ。
あの人さえいれば、生きていけるのだ。
そう思えばこの怒りも、どこか愛おしい。
この怒りは、先生がくれたもの。
先生が、オレにくれたものだ。

邪魔さえければ、理解されなくてもいい。
正しいことだと、認めてくれなくたっていい。
祝福なんていらない。




すっかり遅くなってしまった。
ひとりひとり見つけ、頭を下げ、釘を刺しておくと昼過ぎになってしまった。
せっかく、先生に会えるのに。
(ま、きっと先生は仕事だけどね)
忙しい人だから。
受付に行ったら会えるだろうか。それともアカデミーだろうか。
逸る気持ちをおさえ足早に去ろうとした瞬間。

嬉しそうに歩く、イルカ先生がいた。

よくある薬局に入っていく。
ここは隣町で、不便な小さな町で、わざわざこんなところに来なくても先生が住んでいる地域の方がよっぽど大きな薬局があるのに。
こんなところにわざわざ何のようだろうか。
(・・・偶々、用事で)
そう言いながら足早に駆けていく。
薬局とは正反対へ。
(それにもしかしたら見間違いかもしれないし・・・っ)
気がつくと走りながらひどく言い訳じみた言葉が頭を占める。
何を恐れているのか、足はどんどん早くなった。
見たくない。
認めたくない。
ドクドクと響く心臓がやけに痛かった。


受付に行くと、そこには先生の姿がなかった。
嫌な予感がゾクッとした。
アカデミーだ、と断言する自分がひどく滑稽だった。
「あークソ、今日は忙しいよなぁ」
受付の人が忙しそうに手を動かしながら、どこか苛立ちながら言った。
「まぁこの時期は仕方ないよな」
「こんな日にイルカは休みだぁ?!風邪か?アカデミーが忙しいのか?」
イルカという言葉にビクッと心臓が跳ねた。
休み?
この忙しい時期に?
何で?
「いや、何でも何日も前から頼み込んで休んだらしいぞ」
何日も前から。
この忙しい時期に、何日も前から。
「はぁ!?何かあるのか?」
待ってくれ。
聞かせないでくれ。
早く立ち去らないと。
休みなら。
休みならきっと、家にいるはずだから。
それを確かめるだけでいい。
早く立ち去らないと。
早く立ち去らないと。
だけど、逃げるように立ち去ろうとするオレに呑気な声が無情にも聞こえた。

「恋人が帰還するらしいぞ」

恋人。
先生のその言葉の先は、オレだったのに。

オレのところには、来てくれなかった。


「恋人!?あぁ、そんなこと言ってたな」
「恋人が帰るから出迎えて手料理でもてなすんだと」
「珍しい、あのイルカが?」
「結構本気らしいぞ。よく惚気てた」
遠くの方で声がするが、もうほとんど聞こえなかった。
ふらふらと歩いているのを他人事のように感じた。
恋人。
その地位はオレが半年前に与えられた場所だったはずだ。
だけど、先生はいなかった。殆どの人が出迎えていたあそこに、先生はいなかった。命懸けの任務から帰還したのに、先生はいなかった。
来てはくれなかった。
オレは、時間を割いてまで出迎えに来るような価値がある人間ではないんだ。
(きっと寝坊したんだ)
(目覚まし時計壊れてたし)
(大丈夫、大丈夫。きっと、待っててくれてる)
(家に行けば、オレを出迎えてくれる)
(だってオレは、恋人だから)
(先生がそう言ってくれたから)
嫌に心臓が痛い。
ジクジクと針で刺されるように痛い。
暑くもないのに、汗が流れた。
だけど、それでも、どこかこのままイルカ先生の家に行けば、彼が迎えてくれるのではないかと思っていた。「あーすみません、寝坊しちゃって・・・。せっかく休みとったのになぁ」なんて笑いながら迎えてくれるような気がしていた。
だってあの告白を聞き間違うことなんてない。
誰でもない、彼の告白を聞き間違えるなんてない。
あの日、確かに言ってくれたのだ。

オレはそれしか、縋れるものなんてないのに。

彼の部屋の前に行くと、彼の気配はなかった。
悪い予感がガンガンと巡り、それでも、どこか知るのを延期されたことにホッとした。
ガチャっと合鍵で部屋に入る。先生がくれた鍵だ。いつでも入っていいとくれた合鍵が、まだ機能したことに安堵する。
誰もいない部屋は静かで薄暗い。
草履を脱ぎ、中に入る。
記憶を辿りよせながら、部屋のスイッチを入れた。
安っぽい光に照らされた室内は、静かで。


とても綺麗だった。


理性が崩壊していくのを肌で感じた。
頭空っぽなのに、それでも部屋中見て回った。
まるで粗を探すように。
証拠を見つけるように。
だけど、どこへ行っても部屋は片付けられて、綺麗だった。

先生は、掃除が苦手だった。
初めて来た時は足の踏み場もなくて、物が散乱していた。足で無造作にどかしながら生活してたから、それでよく物を無くしていたから。
よければ掃除してもいいですか?と聞いた。
先生が不自由ないようにいてほしいから。
それから料理も殆ど作らなかった。
三日三晩カップラーメンなんてよくあった。「味が全然違うから飽きないんですよ!」と目をキラキラさせて力説した。
メシ作ったんですけど食べてくれますか?と聞いた。
先生には長生きしてほしいから。
洗濯も関心がなかった。
臭わなければ大丈夫とよくパンツを裏返して履いていた。そんな時間あるなら丸つけしてやりたいと言う先生らしいセリフに、だったら、と思った。

先生が皆のためにって頑張るのだったら。
オレはそんな先生が不自由ないように、里中の皆を大切にしている、オレの好きな先生でいてもらえるために頑張ろうって。

だから全然苦じゃなかった。
全然苦じゃなかったよ。

ねぇ、せんせ。
先生も今そう思ってるの?
誰かのために頑張ってる人を応援してるの?
それともあんなに大好きだった里中の皆より大事な人が出来たの?
だから自分の時間を削っても平気なの?
オレには。


オレには一度もしてくれなかったくせに。


何もかも滅茶苦茶にしてやりたい。
こんな冷たい真実しか語らない部屋なんてなくなればいい。
半年前、確かにオレはここで暮らしていたのに。
そんな痕跡どこにもなかった。
どこにもないんだ。
綺麗に片付いた台所の炊飯器に、食べかけのご飯が残っていた。ここで昼食べた跡が残っていた。
ちらりと見えた、食器乾燥機に、食器が行儀よく二つならんでいる。
嫌だ。
いやだ。
何も見たくない。見たくない。
それでもまだどこかで、誰か来客があったのだと言い訳してくる。だから掃除しただけ。手料理を振舞っただけ。だけどただの客だ。恋人なんかじゃない。
恋人なら。
恋人なら。
もっと具体的な、性的なものがあるはずだ。
例えば。

コンドームとか。
ローションとか。

ふいに寝室に目がいった。
綺麗に整えられたベッドが、少し乱れていた。ほんの数時間前まで使われていたような。
そして、ベッドサイドに。

コンドームとローションが。

嫌だ。
もう嫌だ。


手紙なんてなくていい。
先生は忙しいから。
出迎えなんて来なくていい。
先生は仕事だから。
周りから祝福なんていらない。
黙ってくれさえいればいい。
メシも片付けもいらない。
オレが全部してあげればいい。
先生が、そこにいればいい。
先生が、笑ってくれたらいい。


嘘だ。
全部全部うそだっ!!


本当は誰よりも手紙を待っていた。たくさん送ればいつか返してくれるのではないかと思っていた。
出迎えしてほしかったから、何度も手紙に書いた。忙しい時期だと分かっていたけど来て欲しかった。
本当は皆に理解してほしい。
大好きな人を素敵な人だと認めてほしい。
お似合いだって。
イイ人見つけたなって。
そんなふうに、普通の人のように祝福されたい。
皆に祝福されて幸せそうに先生と笑っていたい。
世界一幸せなお似合いなカップルだって言われたい。
せんせいに。

せんせいにあいされたい。


「貴方に何も落ち度はありませんが俺が一方的に嫌いです」
かつて言われた台詞が蘇る。
告白して、きっぱりと振られた。
それなのにオレがしつこく言い寄って、優しい先生が同情してくれたのだ。傍においてくれた。それだけで幸せだったのに、周りはそれを愚かだと吐き捨てた。別れなければ激戦区に飛ばすと言われて、オレはそれでもいいと思った。
ようやく彼を解放できるのだと思った。
オレは死ぬことでしか彼を解放できないと分かっていたから。
だからそれを告げた時。
『アンタが好きだからに決まっているじゃないですか』
そう言ってくれた時、オレは息を吹き返したんだ。
まだ生きたいって思ったのだ。
絶対激戦区から帰ってきてみせると。
(あぁ、そうか)
敏い彼はそれに気がついていたのだ。
だから、ああ言ってくれたのだ。
最後に餞の言葉を送ったのだ。死にゆく者への最後の優しさだったのだ。夢言葉を送ってイイ夢をみせてくれたのだ。

バカだなぁ。
本気にして。
何が完璧だよ。
オレってこんなにバカだ。



せんせ。
今どこにいますか。
新しい恋人と一緒ですか。
せんせ。
イルカ先生。
もう数日ください。
もう数日オレに甘い夢を見せて。
そしたらきっと。
きっと、里のために、先生のために死ぬから。
今度こそ帰ってこないから。
先生お願いだよ。
最後に、先生に愛されたい。
幸せになりたい。

幸せになりたいよ。



部屋にはいれなかった。
オレの痕跡のない部屋などいたくなかった。
静かに玄関を出て、そのままじっと立ち止まった。


あぁ、先生の足音がする。




◆◆◆




ヨかった。
すごく、ヨかった。
幸せって体の中にあるのだと初めて知った。それが確かに今、内側から全身を満たし溢れてくる。

せんせと初めてエッチした。

思い出すともっともっと幸せが溢れてくる。
幸せって無限にあるのだと、また初めて知った。
色々すれ違って、誤解して、絶望したけど、先生はまた世界をひっくり返してくれた。
昨日は世界の中で一番不幸だと思っていたけど、今は世界で一番幸せだ。
隣で先生が口を開けてすぴすぴ言いながら寝ている。いつも凛々しくつり上がった眉はだらんとなってあどけなく見えた。
可愛い。
すっごく、可愛い。
こんな寝顔知っているのはオレだけだ。世界でオレだけだ。
(昨日の先生、可愛かったなぁ・・・)
経験のない彼は与えられる快楽に驚きと戸惑いを隠しきれず、「怖い怖いっ」と泣き縋った。
そんな先生をあやしながらひどいことばっかりした。
彼の全部感じたくて舐め上げた。まるで犬のように全身くまなく舐め上げた。気持ち悪いだろうなと思ったが止められなかった。「やだっ」とか「汚いっ」とか言いながら泣きっぱなしだったが、オレは夢中で舐めまくった。
イルカ先生の肌はまるで水のようだった。
熱くて。冷たくて。
沁み渡るように全身を巡り、運ばれる。
生命の源。

飲まなければたちどころに死んでしまう、水のようだった。

足の指も、内股も、背中の傷も。
そしたら、先生のは緩く勃ちあがって。
堪らなくなり、むしゃぶりついた。
「しゃぶらないでぇ」
なんて泣きじゃくるイルカ先生は本当に可愛い。しゃぶりながら先生の大事なところに触れた。固く閉ざされていて、先生みたいに慎ましやかなソコをグリグリと愛撫して舐めまわして指を突っ込んだ。
「やらっ、やらぁっ」
拙い言葉で拒否しながらも柔らかくなってきて。
「あついっ、あつ・・・っ」
「ーーっ、せんせ、痛い?」
「ちがう、熱いっ、カカシさんのあつ、ぃいーー・・・っ!」
泣いて縋る手は、一度だって離れなくて。
オレが先生の心に抱きしめられているようだった。
まるで胎児の頃、母親の腹の中にいるような大きな安心と、幸福と。
なぜだろう、涙が止まらなかった。


そろそろ先生が起きるから食べ損なった夕食を朝食と兼ねて作るかと起き上がると、「ん・・・っ」と言いながら一瞬険しい顔をして先生の目が開いた。
「おはよ、せんせ」
自分で吃驚するぐらい甘ったるい声がでた。
完全に恋してる声だなぁと半分にやけていると、ボーッとした表情の先生が体を起こしながら「尻が痛い」と呟いた。
「あ、ごめんなさい。昨日いっぱいシちゃって」
言いながらにやけてしまうのは仕方ないだろう。だって思い出すだけで嬉しくてたまらないのだから。
「お風呂入る?お腹空いた?」
「風呂・・・」
そういいながらノロノロと向かう先生を見送って台所に立つ。昨日買ってくれたししゃもがあったらこれでも食べよう。
暫くシャワーの音が聞こえていたと思ったら、急にドタドタと騒がしくなった。
振り向くとフルチンの先生が慌てた表情で濡れたまま出てきていた。
「せせせせんせ、服っ!いや、タオル!」
「ポスト!ポストに行かないと!」
そのまま玄関から出そうになる先生をなんとか止めて、タオルで体を拭き、服を着せ、オレがポストに取りに行った。案の定、ポストには手紙がぎっしりだった。
半年の間、一週間に約一通。時々二通送っていたので、三十は越えてるであろう手紙はまるでオレの想いのように重かった。
呆然としてるイルカに手紙を渡す。気恥ずかしかったけど、知って欲しかった。

こんなにも、貴方のことを毎日考えていることを。
こんなにも、好きでたまらないことを。

「せんせ、読むのはあと。先にメシ食いましょう」
焼きたてのししゃもを運びながらそう言うと、先生はボンヤリとした顔で山積みの手紙を見ていた。
そのまま早々にメシを食べ、先生は静かにちゃぶ台で手紙を読み始めた。
ゆっくり、一文字一文字噛み締めるかのように。
オレは自分の片付けを終えると、先生の横に座り本を見た。
ペラペラと紙がめくれる音だけが部屋に響く。
たまに彼の手があたり、肩が触れた。それだけでじんわりとした温かなものがこみ上げそうになる。
あぁ、この感情ってなんて言うのかな。
外と同じ青空がまるで胸の中に広がっていくようだった。その中心にイルカ先生がいる。
嬉しそうに手を振ってオレを迎えてくれている。
オレはそっと目を閉じた。
そうすればもっと彼を感じられる気がした。
時々、ぐすんと鼻を啜る音がした。
泣いているのかと思った。
思い当たることは、少しだけある。
それは書いてる時、戦闘中負傷した腕をそのままにしていたためついた血痕だったかもしれない。
イルカ先生を想って零れた涙のあとだったかもしれない。
一度ヤバくて、遺書のように書いた手紙かも知れない。
それでも思うことは一つだけ。
貴方をとても愛しているということ。
それらをひとつひとつ噛み締めながら静かに読んでいる気がした。
どれぐらいしただろう。
「カカシさん」と、静かに呼ばれた。
「手紙ありがとうございます」
「うん」
「気が付かなくてごめんなさい」
「うんん」
「全部、全部嬉しかったです」
そう言いながら、大好きな顔で笑ってくれた。
それだけで、全部救われた気がした。
昨日までの辛かった半年が、確かに絆に変わった気がした。
ただ知ってもらいたかったオレの気持ちは。
こうやって笑顔で受け入れてくれた。
大好きな、イルカ先生に。
「あの」
「ん?」
「俺、何にも返せてなくて。昨日だって寝坊して」
「うんん。全然平気だよ。オレ今本当幸せだから」
「でも・・・」
先生は手紙を抱きしめた。
「俺も、何か返したい」
それはどこか決意めいていた。


「俺、何でもします!何でも言ってください」


何でも。
なんでも?
なんでもぉおお!?

オレの中に駆け巡った言葉は、言い表せない。
仕事にいくな、とか。
この部屋に閉じこもって、とか。
誰にも話しかけないで、とか。
誰も見ないで考えないで、とか。
オレだけを想って、とか。
愛されたい、とか。
愛されたいとか。
愛されたい愛されたい。

「せんせ、オレを恋人にして。ずっと」

ずっと、だって。
ヤバい、泣きそうだ。
オレの願いはずっとだ。
ずっと前から。
ずっとを願ってる。

イルカ先生はニカッと笑った。

「当然じゃないですか!」

あぁ。
先生は、そうやって。
いとも簡単に受け入れてくれるんだ。
強引に、でも恐る恐る伸ばしたオレの腕を。
力いっぱい抱きしめてくれるんだ。

ねぇ、先生。
戦地でずっと、ずっと想ってたよ。
先生の言葉しか、オレは縋れるモノがなかった。
そんな不確かなものしかなかった。それが不安でたまらなかった。
もっと形あるものがほしかった。
確かなものを感じておきたかった。
だけど。
先生がそうやって笑って言ってくれる。
形のないその一言が、何より確かなものだって、今は思えるよ。

オレのこと、まだ好きでいてくれてますか?

そんなこと、もう、聞かない。


「そんなことじゃなくて、もっとないですか?」
「えぇ!?」
こんなに幸せなのに、まだ貰えるのか?
「いいんですよ、何でも。肩もみしてほしいとか、膝枕してほしいとか」
「じゃ、じゃあ」
ゴクリと生唾を飲んだ音がやけに大きく聞こえた。

「エッチ、したいです」

欲望に忠実な言葉が出たが。
先生は一瞬ポカンとして、「喜んで」とまた笑ってくれた。




「カカシさん、お待たせしました!」
校門前に待っていると先生が笑顔で駆け寄ってくる。オレのために。
オレもニコニコと駆け寄る。
「お疲れ様」
「あーやっとテスト終わりました!カカシさんが手伝ってくれたお陰です」
「うんん。先生のテストすごく勉強になるからさせてもらえて嬉しいよ」
「そうですか!」
そう言うとニカッと笑った。
「今日は俺の奢りです」
「一楽?」
「モチのロンです!」
上機嫌に歩き出す。
ここ数日、テストの関係で先生は忙しくピリピリしてて、全然イチャイチャできなかったけど、今日はできるかもしれない。
そう思うとカッと体が熱くなる。
最初の頃に泣かせ過ぎて「一日一回!」と約束させられてしまった。しかも先生の機嫌と体調が良くないと禁止されてしまう。
あの極上のエッチを知ってるから、出来ないとなると悶々とした。彼に惚れてから随分とたち、その間は指一本も触れなかったから、きっと前と変わらないと思っていたのに、知ってしまうと全然違う。すぐ手を伸ばせば、あの体を味わえるのに、手を出せない。もどかしい。
でも嫌われたくないから、絶対無理強いはしない。
今日は久々だから二回ってお願いしてみようかな。上機嫌だし、大好物の一楽だし、きっとイケる気がする。
ふふっと笑いながら共に歩いていくと、見知った顔が前から来た。
「あ」
「おぅ、チトセ!」
「あれ?隊長!・・・それにイルカ先生?」
「せんせ、知り合い?」
「教え子です」
「オレはこないだの任務で部下だったの」
「お前そんなとこ行ってたのか!?」
かつての部下はヘヘッと笑った。戦地では見せなかった子どもっぽい笑みだった。
この人の前ではみんな子どもに戻るなぁとほっこりする。
「ん?何だ?買い物帰りか?ちゃんと自炊するんだな」
「違うよ、これは買い出しさせられたの。同棲の彼女が作ってくれるんだ」
そう言えば先日門の前で若い女の子が駆け寄っていた。確か重い病を患ってる彼女の治療費のためにあの戦地に来たって言ってたっけ。若いのに彼女想いだなぁとひどく感心した。
先生は目を白黒させている。
おそらく彼の頭の中では子どものまま時が止まっていたのだろう。そして今まで恋人がいなかった彼にとって彼女も同棲も衝撃的なのだろう。
「お前まだ十代なのに・・・彼女・・・同棲・・・」
「それよりイルカ先生、隊長と仲良いの?」
「ん?おぅ!仲良しだぞ!」
「万年ヒラ中忍の先生がぁ?」
「そこは関係ないだろ」
ゴチンといつものようにゲンコツした。いつ見ても痛そうだった。
「だって隊長スゴイんだよ!絶望的な戦地一人でひっくり返したんだよ!」
「へぇ!」
「作戦なんかさ、全然見たことないことするし、術なんか全然見えないんだよ!もう何したか誰も分かんなかったんだぜ」
目をキラキラさせながら言われるとちょっと恥ずかしい。でも先生も目をキラキラさせてくれるから何だか止めずらい。
「あと、部下にもすっげー優しくてさ、俺の話聞いてくれたり、励ましてくれたり。動けなかった俺たちのために晩メシ作ってくれて、これがまた美味いんだよ」
「そうか!」
「それから・・・」
するとキラキラとした目が一瞬曇った。
そしてチラッとオレを見ると神妙な顔つきでイルカ先生を見た。

「イルカ先生、隊長の恋人知ってる?」

そう言われて、先生は完全に固まった。

「隊長、恋人のことすごく大切にしてて、毎回毎回手紙欠かさないし、いいよる女にはどんなに恋人が大切か言い聞かせるし、皆が落ち込んでる時は、恋人の話を聞かせて励ましてくれるんだけどさ」
「お、おぅ・・・」
「恋人から手紙ってきたことなかったし」
「・・・」
「料理が上手いの聞いたら恋人の為に毎日作ってたって言うし」
「・・・」
「帰還したとき迎えにも来なかったし」
「・・・」
「隊長は、最高の恋人だってずっと言ってたけど、絶対そんなことないと思うんだ。こんなスゴイ人で優しい人だからきっと言いくるめられて騙されて蔑ろにされてるんじゃないかって」
「チトセ」
オレは静かに名前を呼んだ。
「そんな人じゃないよ」
「っ、でも!」
「オレの大切な人、そんな風に言わないでくれ」
そう言うと、何か言いたそうに口を動かし、堪らずイルカ先生の方を振り返った。
「なぁ、先生!先生ならどう思う!?隊長は、恋人は里に尽くす忙しい人だからって毎回言うけど、皆おかしいって言ってた!なんで愛してないんだよ。なんで大切にしてあげないんだよ。こんなスゴイ人なのに!こんな優しい人なのに!おかしいだろ!ねぇイルカ先生!!」

「違うっ!!」

イルカ先生は大声で叫んだ。
とても大声で、口が挟めないほどだった。
「そりゃ家事だってやってもらってるし、仕事だって手伝わせてるし、出迎えには寝坊するし、万年ヒラ教師だし、そもそも男だし、中忍だし、冴えないし、なんかもっさりしてるし、彼女なんかできたことない童貞だし、ラーメンばっかり食べてるし、そのせいかちょっと臭いし、ワガママだし、自己中だし、優しくなんかないけどっ!」
先生はぎゅっと拳を振り上げた。


「アンタのこと、誰よりも愛してますよっ!!」


ぽかぁんと。
世界が一瞬にして止まった。

あぁ。今、この瞬間。

この世界を充満しているのは、先生の愛だけだ。


「俺だって、俺だってなぁ!」
そう言って走り出した。
あまりのことに、体も心も脳も機能しなかった。
走り去る先生を、二人でぽかんと見送る。
「・・・・・・、あー、えーっと・・・」
気まずそうにチトセが頭をかいた。
「隊長の恋人って・・・」
「うん」
「あー、そーかぁ・・・」
そう納得すると、ハハッと嬉しそうな声がした。オレも堪らず笑った。
「イルカ先生って俺たちの先生の時から、一直線で、周り見えなくなる時があるんですよねー」
「そうだね」
「器用貧乏で、なんでも上手くやるのに、その分自分のことになるとルーズで、雑だし、男臭いし」
「うん」
「でも優しくて大好きな恩師です」
ニカッと笑う。
その笑顔は、まるで先生のようだった。


「勝手に疑ってすみません。イルカ先生なら、間違いなく、隊長の最高の恋人ですよ!隊長なら、先生のこと任せられるし、先生が隊長の恋人なんてすっげーお似合いです!」


そうデショ?
オレは万遍の笑みで頷いた。
スゴイ人なんだよ。
そんな人がオレの恋人なんだよ。
オレの事愛してくれてるんだよ。
すごいデショ?
幸せ者デショ?

自慢の恋人なんだ。
皆に見せびらかしたいぐらい、自慢の恋人なんだ。



先生の部屋に帰ると、イルカ先生が半泣きになりながら怒っていた。
バンバンと卓袱台を挟んだ反対側へ座らされ、正座させられた。
「俺だって、俺だってなぁ!」
そう言いながら何故か紙を投げつけられた。
てっきりオレがあげた手紙だと思って、やっぱり重かったかなぁと見ると。
そこには見慣れぬ文字が並んでいた。
「え・・・?」
それはイルカ先生の文字で。
だけどひどく乱れていて。

そしてどれ一つ完成しておらず、全て途中で終わっていた。

「俺だって、心配してました!いっつも執拗いぐらい式が来るのに来ないからヤバいんじゃないかって必死で情報集めたり、慣れない手紙書いて宛先分からなくて送れなかったり、カカシさんの料理慣れたから何食べても美味しくないし、なんの情報もなかったから不安で中々眠れなかった・・・っ」
「せんせ・・・」
半泣きになりながら叫ぶ先生はいつにも増して可愛い。
「お陰で遅刻しまくるし、メシも上手くないからやつれてくるし、散々な半年だったんですからね!自分だけ大変だったみたいな顔しないでください!」
「はい・・・」
「それもこれも全部カカシさんのせいですから、責任とってくださいよ!」
プリプリ怒ったふりして泣くイルカ先生は、なんて不器用で愛おしいのだろう。
すごく、心配してくれたんだね。
オレのこと、想って過ごしてくれてたんだね。
知らなくてごめんね。
そばにいれなくてごめんね。
泣かせちゃってごめんね。

ああ、なんて幸せ。
愛に溢れたこの世界は、死ぬなんてもったいないぐらい愛おしい。

「一生責任とります」
遠回しのプロポーズは、涙でぐちゃぐちゃの先生に「当たり前です!」と叫びながら殴られた。
なんて幸せ。
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